農業の経営継承は、どうする?



今年に入ってから、農業経営の事業継承について、ご相談が増えています。 

 

これまでの農家の後継ぎは、ご両親等が自営で農業従事していれば、息子等を後継者にして、農業を継ぐ継承スタイルが一般的でしたが、現実には、後継者がいない農家が増大し、廃業せざる得ない状況が増えています。

 

農業後継者がいない農業者から、「自営農業を廃業せずに、信頼できる後継者を探して、営農を継承してほしい」との相談がある一方、農地の取得や農業機械の譲渡などを含めて、新規就農を目指す方から、農業の経営継承の相談も多くなっています。

 

当事務所では、農業経営の継承について、ご要望の方のお話を十分にお聴きし、既存の農業経営を円滑にバトンタッチする「農業の経営継承マッチングサービス」の取組みを行っております。

 

今回は、農業経営の継承について、課題と取組をご紹介します。

 

 まず、農林業センサス等の調査結果から見ると、ここ数年、新規就農者は5~6万人台で推移していますが、令和3年の新規就農者は52,290人で前年に比べ2.7%減少し、このうち49歳以下は18,420人で、0.2%増加してます。(表1)

 

しかし、令和2(2020)年時点では、基幹的農業従事者数は、2010年の約205万人から約136万人に減少しています。(図表 特-1)

 

わずか10年で、30%以上の70万人が減少した要因には、深刻な後継者不足があります。

 

後継者がいない農家は、高齢となって、廃業を選択するしかない現実が、この70万人の減少の要因となっています。

 

また、令和2(2020)年の基幹的農業従事者数のうち、65歳以上の階層は全体の70%(94.9万人)を占める一方、49歳以下の若年層の割合は11%(14.7万人)となっています(図表 特-2)。

 


農林水産省「令和3年新規就農者数調査結果」
農林水産省「令和3年新規就農者数調査結果」

次に、令和2(2020)年の年齢階層別の基幹的農業従事者数を、平成27(2015)年の5歳若い階層と比較すると、70歳以上の階層では後継者への継承等により減少する一方、69歳以下の各階層で微増となってます。(図表 特-3)

 

このうち、令和2(2020)年の20~49歳層(平成27(2015)年時点の15~44歳層)の動向を見ると、親からの経営継承や新規参入等により12.4万人から14.7万人と2.2万人の増加、60~69歳層(同55~64歳層)は36.7万人から39.3万人と2.6万人増加してます。

 

60~69歳層の増加は、退職後に就農するいわゆる「定年帰農」による増加と考えられます。

 

一方、人数の多い70歳以上の階層の減少率が高いことから、基幹的農業従事者全体としては大幅な減少となっています。

 





新規就農者のうち、20~49歳層の動向を見ると、親からの経営継承や新規参入等により12.4万人から14.7万人と2.2万人の増加が注目されています。

 

新規就農は、認定新規就農者制度などを活用して、制度資金の融資や補助金の交付に加えて、地元の市町村等の支援を受けながら、小規模の農業経営からのスタートが一般的です。

 

当事務所がご委任を頂き取り組んでいるのは、上記の新規就農ではなく、後継者のいない農業者の農地・設備・農業機械、農業経営上のノウハウ等を譲り受けて(有償含む)、農業経営を第三者に継承するためのご支援です。

 

この方法の場合、新規就農制度の活用ではなく、いきなり、認定農業者制度の活用が可能となることから、必要な営農資金の融資については、現農業者の実績額の考慮も可能となり、2年目以降の規模拡大も、円滑な取組が可能となります。

 

具体的な農業経営の継承取組事例をご紹介します。

 



農業経営の後継者には、家族・親族ではない「第三者」に、農業経営を継承した取組事例です。

 

農業後継者を求めている農業者にとって、家族・親族ではない相手への農業経営移譲は、企業のM&A(第三者継承)とは異なって、譲渡金等のみでは、解決できないところも少なくありません。

 

こうした現状の中、現農業者と農業後継者の信頼関係だけでは、経営継承の準備段階・実行段階・継承後の営農段階において、検討すべき事項等の整理・解決ができない様々な問題が生じてきます。

 

そこで、農業経営継承を専門的に支援できる人材等の活用が必要となり、当事務所が農業経営等継承ノウハウを有していることから、その支援をさせて頂いたところです。

 

1 経営継承の進め方

 

 これから農業経営を継承する新規就農者にとって、継承する農業経営が収益を出せるかが重要な課題となります。

 

この課題を洗い出すために、現経営者は、経営継承のための「経営継承診断票」を作成し、現在の農業経営を「見える化」して、継承に向けた課題を客観的に把握することから始まります。

 

「見える化」には、経営の全体像を明らかにするために、経営権の把握、資産(流動資産・有形固定資産・無形固定資産・負債・知的資産等)の把握に加えて、青色申告書(税務署)・農業改善計画書(市町村)・営農計画書(金融機関等)・雇用契約書・農地の権利関係書類・農業機械の購入契約書・取引先・営農通帳等などから、経営状況の全体を「見える化」することが最重要となります。

 

2 経営継承計画及び営農計画書の策定

 

経営継承計画の策定に当たっては、現経営者と後継者が共同で実行プランを作成し、将来に向かって継続的に対話をし、専門有識者を交えつつ、課題を解決しながら、ブラシュアップし策定することとなります。

 

経営継承計画書の別冊版となる「営農計画書」は、現農業経営者に対して、農地の状況・栽培の作物・収量・出荷・販路などに加えて、譲渡可能な農業施設・農業機械・農業資材等の情報について、より詳細に聴き取り作成します。

 

作成の事項・内容は、次のとおりとなります。 

 

(1)農業経営の概要、(2)構成員プロフィール、(3)農業経営の目標、(4)農地の概況及びほ場別配置図、(5)生産計画、(6)ほ場別の土壌・水利・日照の状況、(7)ほ場別の作付面積、(8)農業機械等の整備状況(移譲の農業機械等含む)、(9)農業機械等の整備計画、(10)作物別の収支計画、(11)作物別の生産費、(12)人員計画(各作物労働時間)、(13)その他

 

上記を作成するためには、ほ場別・作物別の単位当たり収量・出荷額等の売上額に加えて、各作物別の種苗費・肥料費・農薬費・農業資材費・燃料費・賃借料・減価償却費・労働費等の費用について、把握し積算する必要があります。

 

なお、ほ場別のデータ等は、現農業者がスマート農業用アプリを導入されていれば、アプリ連携・データ共有の提供により、ほ場別の地力・生育・被害・気象等の履歴の把握によって、生産性向上のツールとしての利用が可能となり、営農計画の基礎データとなり得ます。

 

これらをデータを用いて、1年目の生産から、目標の5年後の生産まで、作物別の収穫量・出荷額・生産費を算出し、実現可能な農業所得額を算出することとなります。

 

3 経営継承計画の実行

 

次に、策定した経営継承計画に基づき、具体的な行動を実行します。

 

農業経営に必要な経営資産や農業機械の譲渡(売却)など重要な取引を実行(各契約書の作成)することとなり、移譲する資産の評価等を正確に算出し、円滑に経営移譲し、トラブルを未然に防止することが重要となります。

 

具体的には、農業施設の売却(または賃貸)の契約書、農地の売買(または利用権設定)のための契約書や、許可等が必要な場合には自治体(農業委員会)への申請手続き、農業機械等の売買・賃貸には、譲渡契約書・賃貸契約書等を交わす必要がりますので、専門有識者に依頼をおすすめします。 

 

なお、当事務所では、これらすべてにおいて、対応させて頂いております。

 

以上の取組については、準備段階から6ヵ月程度の期間を要し、経営権や農業資産を移譲した後も、定期的に経営継承計画と営農計画を基に、進捗管理を行い、必要に応じて修正・行動を続けていくことが重要となります。

 

これらを実行するには、後継者の努力だけではできず、農業経営継承に関する専門的知見を有した者に伴走型支援を得て進めることが、重要となります。

 

そうすることで、5年後の目標を確実に実行できる道筋を進むことができます。

 


【徒然のひとこと】 


農業経営継承は、支援を得ながら進めることで、円滑に、第三者後継者に引き継ぐことができます。

 

継承した後、営農の資金は制度資金(農業経営基盤強化資金等)の利用や「経営継承・発展支援事業の補助金」の活用などを行いつつ、経営規模を拡大させ、農業所得の増大を図っていきます。

 

当事務所では、農業に係る総合的な知見等に基づく経営継承計画及び営農計画のプロフェショナルとして、完成度の高い経営継承計画・営農計画書を提供させて頂いております。

 

農業経営継承のご相談の方は、お気軽に、お問合せをお願いします。