スマート農業データ活用による農業経営分析とは?



当事務所では、現在、農業経営の支援に加えて、スマート農業における専用の各アプリの機能を活用して、ほ場別の記録・生育管理、栽培ステージごとのAIによる衛星画像分析等も加え、栽培の生産効率化及び農業経営改善に活かせる支援をしております。

 

支援内容は、スマート農業に係る3つのアプリを活用し、水稲のほ場管理においては、ほ場別生育・栽培管理、可変施肥・可変防除・収穫量・水分率・作業時間等のデータ収集・分析等の支援、農業経営分析においては、農業経営分析の財務分析(農業会計等含む)、作物別の付加価値分析、農業改善計画、農業経営計画など、幅広い支援です。

 

これらの支援は、各作物別に、損益分岐点分析を加味した規模拡大に併せて、作業効率化と生産性向上の取組によって、農業所得の向上に直轄する支援です。

 

今回、ご紹介する農業経営者は、南関東地域において、経営規模5.0ha(ほ場数60)、一ほ場当たりの10a~15aのほ場で、昨年から農業経営に取組んでいる若手農業経営者(認定農業者)です。

 

令和5年産の作付(栽培)規模は、水稲4.6ha、ブロッコリー3.5ha、サニーレタス2.7ha、エダマメ0.5haで、2年目の挑戦です。

 

まず、最初に共同して取組したのは、農業経営支援の分野において、「営農計画書」の作成から着手しました。

 

「営農計画書」は、農地の耕種状況、作付(栽培)の作物、各作物の栽培技術・収量・出荷・販路、農業機械等の整備状況、農業施設の整備・計画状況など、より詳細に聴き取りし、現地調査に基づく現状把握と課題把握を行いました。

 

1年目から、水田裏作の活用として、野菜(ブロッコリー等)栽培にチャレンジし、栽培技術には自信を持った農業経営者です。

 

安定した農業経営には、この農業経営者が実践している【稲作後の水田を利用した「野菜づくり」】が必須の取組となっております。

 

水田裏作として栽培できる野菜は、南関東エリアでは、キャベツ、ブロッコリー、サニーレタス、小松菜、ほうれんそう等があります。

 

ほ場条件(土壌・土質)としては、水はけが良く、日照が十分に確保できるほ場であって、冬場の気象が野菜栽培に適したほ場が適地となります。

 

支援農業経営者のほ場では、上記の条件を満たしており、水田裏作として野菜栽培が可能な地域であることを現地調査で確認しました。

 

また、は種作業が、水稲の収穫時期と一部重なる時期はありますが、は種作業効率を短時間で行うために、専用育苗ハウスと専用播種機を整備されていれば可能となり、支援農業経営者は、これらの農業機械・農業用施設等を整備済でありました。

  

この現地調査を通じて、(1)農業経営の概要、(2)構成員プロフィール、(3)農業経営の目標、(4)農地の概況及びほ場別配置図、(5)生産計画、(6)ほ場別の土壌・水利・日照の状況、(7)ほ場別の作付面積、(8)農業用機械・農業用施設の整備状況、(9)農業用機械・農業用施設・設備等の整備計画、(10)作物別の収支計画、(11)作物別の生産費、(12)人員計画(各作物労働時間)などを作成したところです。

 

上記を作成するためには、ほ場別・作物別の単位当たり収量・出荷額等の売上額に加えて、各作物別の種苗費・肥料費・農薬費・農業資材費・燃料費・賃借料・減価償却費・労働費等の費用について、把握し、積算する必要があります。

 

今回は、各作物の生産費の項目は、直近の他の農業経営者の調査結果、または、品目別の標準原価を用いて試算、出荷額はR5年3月時点の大田市場の市況結果に基づき試算して、R5年産収支計画を作成したところです。

 

支援農業経営者の現時点(R5.10.31)の米出荷額は、上記の計画と比較すると、R5年産水稲は猛暑の影響により、やや減収となったものの、生産計画の85%の出荷額となったところです。

 

現在、ブロッコリーの定植は、R5.10月(最盛期はR5.11月~R6年1月)から始まってますが、順次、収穫・出荷し、出荷額が見込まれています。

 

本農業経営者は、水稲作以外に、ブロッコリーに加えて、サニーレタス、小松菜、ほうれんそうを裏作で取組み、水稲作しないほ場では、6月~9月にエダマメを栽培・収穫・出荷、その後作に、ブロッコリー、サニーレタスと連続した栽培形態を実現し、安定した農業経営を目指しているところです。 

 

次に、「ほ場管理・生育管理・生育診断・施肥・防除・収穫適期等の判定」の支援内容について、ご紹介します。 

 



現在、農業栽培管理において、ITやAIの進化によって、スマート農業による栽培管理・生育診断や可変施肥・可変防除など、農業の生産性向上に役立つアプリが多くあります。

 

しかし、自分のほ場における諸課題を解決するアプリについて、課題が何なのか、何を選択して良いのかと、立ち止まっている農業者も少なくありません。

 

農業栽培において、解決したい課題に対応可能なアプリを選ぶことはもちろんですが、単体のアプリだけでは、解決できない場合が多くあるため、複数アプリを組み合わせることによって、相乗効果を発揮し、生産性向上に役立つアプリを選択することが重要なポイントになります。

 

スマート農業機械・技術の導入によって、利用できる農業栽培管理のアプリのうち、一部のアプリについて、ご案内しますので、ご参考にしてください。

 

【栽培管理・生育管理】

 

1 栽培管理・生育管理アプリ:「アグリノート」(ウォーターセル株式会社)

   

2 農作業管理アプリ:Agrihub(株式会社アグリハブ)

 

【ほ場マップ・収量マップ】

 

衛星画像とAI解析による栽培管理アプリ:xarvio(ザルビオ)(BASFジャパン株式会社)

 

営農管理システム:Z-GIS(JA全農)

 

その他、農業関連情報、農薬、病害虫診断に特化したアプリなどありますので、ほ場の課題に対応可能なアプリをお試しください。

 

当事務所では、栽培管理・生育管理アプリ「アグリノート」、衛星マップ機能とAI分析機能の栽培管理アプリ「ザルビオ」を併用して、各ほ場別の生育マップと地力マップに基づき、直近の気象予報を確認しつつ、各ほ場別・作物別の生育把握・施肥管理・収穫時期等において、活用しています。 

 

利用において、ほ場別のデータ等は、アプリ連携・データ共有の提供により、ほ場別の地力・生育・被害・気象等の履歴の把握によって、適正な施肥や農薬散布が可能となり、生産性向上のツールとしての営農計画の基礎データとなり得ます。

 

これらスマート農業機械・技術によるデータ等の解析を通じて、当年産の生産から、次年度の生産プロセスにおいて、作物別の生育診断・収穫量・出荷量・生産費等を算出し、生産性向上を実現し、農業所得額向上につなげる取組となります。

 



それでは、これらスマート農業から得られる各データを活用して、農業経営分析は、どんな分析が可能となるでしょうか。

 

一般的な農業経営分析においては、部門別の生産費の動向、損益の動向、財務指標の分析など、表面的な分析が多数を占めています。

 

当事務所の農業経営分析にあたっては、まず、農業会計は、経営分析機能を備えた会計ソフトを使用し、費目別計算・部門別計算・製品別計算を行って、栽培品目別の生産費を算出し、この明細を基に、財務諸表「貸借対照表、損益計算書(附属明細表含む)、製造原価報告書」を作成します。

 

今回のご紹介の農業経営者においては、稲作、水田における露地野菜(各作物別)について、既に5年間(R5年産~R9年産)の詳細な営農計画書(生産費:標準原価計算により算出)は作成済ですので、当該年産の財務諸表に基づき、生産費(標準原価計算)・売上高等を中心に、比較・検証から着手します。

 

当事務所の手法は、作成済の当期の標準原価と当期の実際原価を比較することによって、「原価差異」を計算し、この差異が「どのような原因で発生したのか」について、詳細な原因分析を行います。

 

例えば、減収した場合には、生育中の気象被害なのか、気象であれば、生育ステージのどの期間か、その気象は、最高気温・最低気温の影響か、日照不足であれば、曇天による日射量不足なのか、雨量・風・ひょう害であれば、生育のどの時期に影響したのか、施肥不足や病害虫被害による減収であれば、なぜ施肥不足を招いたか、病害虫であれば、なぜこの農薬が効かなかったかなど、詳細に原因分析を行っていきます。

 

次に、生産原価と生産規模と利益について、分析を行います。

 

具体的には、総原価を変動費と固定費に分け、変動益(売上高)から「変動費」(生産規模の増減に比例して変化する原価)を差引き、売上高に比例する「限界利益」を算出し、さらに、「限界利益」から「固定費」を差引いて、「営業利益」を算出することによって、原価と生産規模と利益の関係が見えてきます。

 

これが「損益分岐分析」となり、損益分岐点となる作付(栽培)面積を求めることができます。なお、逆に、希望利益を達成する作付(栽培)面積も求めることもできます。

 

以上のとおり、規模拡大を図る際には、常に、作物別に「損益分岐点」を算出し、年次計画を立てて、実行する必要があります。

 

農業経営分析には、「損益分岐点分析」以外に、収益性分析、生産性分析、成長性分析、キャシュ・フロー分析、作目別付加価値分析、利益増減分析など、重要な農業経営分析があります。

 

農業ビジネスとして、確実な成果を得るためには、これらの農業経営分析は、欠かせない重要な取組となります。 

 


【徒然のひとこと】 


当事務所は、農業経営支援を含め、農業経営者のお力となっており、また、これからの農業経営には欠かせない「スマート農業機械導入支援」においても、積極的に取り組んでおります。

 

この「スマート農業機械等導入支援」(農林水産省補助金)には、農業者ではなく、農業支援サービス事業体が対象となる補助金であり、他にも多くの補助金メニューがあり、当事務所では、各補助金の申請支援を行っております。

 

また、農業制度資金の「農業経営基盤強化資金」(スーパーL資金)(日本政策金融公庫融資)の借入申込において必要な「経営改善資金計画書」の作成支援等を行っており、融資実績も、多数、有しています。

 

行政書士による農業支援は、農地転用業務に限定されてる方が大半ですが、当事務所は、農業経営支援のプロとして、スマート農業から得られる各種データを活用した「新たな農業経営改善」に取り組んでいます。

 

農業経営支援につきましては、上記に加えて、農業支援サービス事業の導入支援も含めて、お気軽に、ご相談ください。